一昔前まで、といってももう20年近く前になりますが、そのころは4ストロークエンジンのバイクには、車と同じオイルを入れるのが普通でした。ところが、クルマ用のオイルの方向性が省燃費に切られだしてから、二輪(オートバイ)専用のオイルをオートバイに入れるよう、オートバイメーカーもオイルメーカーも勧め始めます。それはいったいどういった理由からでしょうか。

理由は大きく言って三つあります。第一にはオートバイのエンジンは四輪車(クルマ)と違って、高回転・高出力タイプであること。第二には、クラッチがウェットタイプでエンジンオイルに浸かっていること。第三にはギアボックスもエンジンオイルで潤滑されること。

第一のエンジンの性質の違いは、オートバイのエンジンが空冷も多いことも手伝って、油温がクルマのエンジンと比べ高く、その分粘度が高いことが必要となり、クルマの省燃費をより目指した低粘度のオイルでは、必要な油膜が保ちにくいといったことが理由です。また、オートバイのエンジンは回転の上がりが早く、その際にも油膜がきっちり保たれている必要があるため、クルマに比べ粘度の高いオイルが求められているのです。

第二の理由は、オートバイのパワートレイン開発者から一番問題とされた箇所です。オートバイのクラッチは、その耐久性、使い続けた際の安定性から、クルマとは異なり、オイルが循環するウェットクラッチとなっています。クルマ用に開発された、省燃費オイルは摩擦抵抗を軽減することを目的に、FM(フリクション・モディファイヤー=摩擦軽減剤)が添加されています。この摩擦軽減剤はクラッチのつながりに悪影響を及ぼします。当然、クラッチのコントロールが難しくなるほか、クラッチがエンジンのパワーに負けて、滑るということがおきるのです。

このため、日本のオートバイメーカーで構成されるJASO(日本自動車技術者会)では、オートバイ用のオイルの規格を独自に定めました。それが、JASO:MA、MBという、4サイクルエンジンのオートバイ用の規格です。日本のオートバイメーカーはこのどちらかを必ず使うようサービスマニュアルに指定しています。

第三以下は次回に説明します。


日本クラシックカー会報誌「オイル・色々ばなし−26」より



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