「エルフ」といえば、オイル以上に有名なのがレース用の燃料です。90年代初頭にウィリアムズ・ルノーがエルフのスペシャルガソリンで数十パーセントのパワーアップを果たしたなどとよく言われたものです。それは確かに事実で、エンジンテクノロジーの革新とあいまってF-1に革命を起こしたものです。今回はエルフの得意分野である燃料について少し書きたいと思います。

ガソリンといえばオクタン価がまず第一番に浮かぶと思います。このオクタン価には2つあり、普通はリサーチオクタン価を指します。「100オクタンのハイオク」といったりしますが、それはこれです。もうひとつはモーターオクタン価と呼ばれるもので、一般的ではありません。リサーチオクタン価に比べ、数値は低くなります。この二つの違いは回転域による違いと見ることができます。すなわちリサーチオクタン価は低回転域での数値で、モーターオクタン価は高回転域での数値です。もっとも測定はリサーチで500回転、モーターで700回転というもので、現代の高性能エンジンのことを考えると、何か不釣合いのような気もします。オクタン価が高ければいいガソリンで馬力がでるように思いますが、これは思い違いです。オクタン価とは異常燃焼を防ぐための数値と考えた方がよく、オクタン価が高ければ、圧縮比が高い高効率なエンジンを守る値が高いと見るべきでしょう。

最近のF-1で使用されているガソリンは、実はオクタン価はあまり高くありません。市販のハイオクよりも低いくらいです。理由は第一にF-1エンジンの燃焼室が理想的な形状をしているために、高圧縮比にもかかわらず、異常燃焼がおきにくいこと。第二には、レーシングNAエンジンでは高回転化がパワーアップの重要なファクターであり、燃料にもより早い燃焼速度が求められるからです。高いオクタン価と燃焼速度とは相反する面があるのです。そしてこれは私の想像なのですが、極端な高回転型エンジンなので、従来のオクタン価が当てはまらないというのもあるかもしれません。

F-1という最先端の技術開発の場では、燃料に至るまでまったく新しいコンセプトでのアプローチが日夜続けられています。そしてそれがエルフがF-1をサポートし続ける理由なのです。


日本クラシックカー会報誌「オイル・色々ばなし−12」より



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