オイルを開発していくには、いろいろなシミュレーション試験を積み重ね、最終的に本物のエンジンで試験、確認をするという過程を経ます。エンジン試験はその結果の精度を高く保つため、当然ベンチでの試験となります。この辺りは常識ですね。

では、どうやって評価を下すのかというと、試験終了後のオイルを抜き取り、成分の分析、そしてエンジンを分解し、各パーツのチェックと測定(主に磨耗具合を測定します。)を行って下すということになります。オイルを分析すれば、使用前使用後のオイルで含有量が大きく増えた金属元素があれば、その金属が多くを占めるエンジンパーツの磨耗が進んでいることがわかります。また、エンジン各パーツの重量を測定するだけでも、磨耗が進んだことがわかりますし、寸法を測れば磨耗の進行の仕方がわかります。ですがこの方法は旧態依然としたままで、試験終了後にしかその結果がわかりません。

数々の優れたオイルを開発してきたエルフのソレイズ研究所では、オイルの開発をさらに迅速に、さらに詳細なデータを取得・分析するために、放射線を利用してリアルタイムにエンジン各部の磨耗の進行状況をモニターできる新装置を開発しました。この装置を利用すると、エンジン試験を行いながら、エンジンの磨耗状況を逐次モニターすることができます。油温が何度くらいのときに、磨耗が進行するのかとか、磨耗を防ぐための添加剤が、狙った油温域で、ねらった部位に想定どおり機能しているか、とか、これまでよりはるかに細かく分析できるようになったわけです。この世界初・唯一の新装置を利用して、F-1用のオイルが開発されていますし、それだけでなく、画期的な新オイルの開発に役立つものと期待されています。

この新しい装置の開発により、アメリカ自動車技術者会(SAE=オイルの粘度の規定を定めていることで、知られています)から、ソレイズ研究所の開発に携わったスタッフに対し、”Grand Prize(大賞)”(2005年)が贈られました。これまでにない画期的な、かつオイル開発に有用な装置であることに対しての表彰です。地味ながら、こういった開発・評価の手法の革新が、省燃費、寿命の延伸といった課題の多いオイルの性能アップに寄与していくことでしょう。


日本クラシックカー会報誌「オイル・色々ばなし−20」より


ウチがelfオイルを信頼して使用している理由の一つです。